海外FXと比べて国内FXの利用は難しいという声を耳にすることがありますが、国内FXを実際に利用したことがない人からすれば、「どうして?」や「国内のFXの方が信頼性が高いのでは?」と疑問に感じるかもしれません。日本では、「国内」という言葉に対して過剰な信頼を寄せる傾向が見られます。
たとえば、食品ラベルに「国内製」や「国内産」と記載されているだけで、それが安全だと感じる人が多いのもその一例です。しかし、実際には、国内で製造や生産が行われていても、具体的な条件やプロセスを詳しく知るのは難しいのが現実です。このような考え方は、国内FXにも当てはまります。
「国内FXが難しい」とされる背景には、こうした信頼感に対する誤解や期待を超えた、具体的で明確な理由が存在しているのです。
今回は国内FXが使えない理由について詳しくお伝えしていきます。
国内FXの9割が負けると言われる不思議
国内FXに関する話題でよく耳にするのが、「FXで9割が損をする」や「FXは基本的に損をする投資」といった世間の声です。そして、「わずか1割の人しか利益を得られない」とも言われています。
確かに変動の激しい相場を対象とする以上、絶対に利益を得られるわけではないのは理解できます。しかし、普通に考えてみてなぜこれほど多くの人が損をしてしまうのでしょう?FX取引は価格が上昇するか下降するかという2択をすることで勝ったり負けたりする投資です。理論上は上昇と下降の確率は50:50であるため、利益と損失も均等に分かれるはずです。それにもかかわらず、多くの人が損をしているのは不思議に思いませんか?
国内FXで巨額の損失を被ったという話をよく耳にしますが、もちろん、そこにはFXに関するスキルやセンス不足が原因となる場合もあるでしょう。しかし、この問題の核心はもっと深い部分にあるのではないでしょうか。
考えられる理由の一つとして、国内FXが提供する環境そのものがトレーダーにとって不利に働いている可能性があります。たとえば、国内FXの仕組みや規制が取引を制約し、結果的に多くの人が損失を被るリスクを高めているのではないでしょうか。この点について、さらに掘り下げて考えてみましょう。
国内FXが使えないのはその取引方法によるところが大きい
国内FXの不利な部分は、主に取引方式に起因しています。
多くの国内FX業者が採用している取引形式はOTC(Over The Counter)取引です。これは「店頭取引」や「相対取引」「DD方式」とも呼ばれるもので、トレーダーとFX業者が直接取引を行う仕組みです。市場参加者同士が取引所を介さずに直接条件を交渉し、価格や数量を取り決める相対取引で、取引所取引のように標準化された条件が存在しないため、取引条件を柔軟に設定できるという特長があります。「カウンターを介して取引を実行する」というイメージで理解すると分かりやすいでしょう。
OTC取引が問題視されるのは、トレーダーの注文が必ずしも正確に実行されないリスクが伴う点にあります。たとえば、トレーダーが買い注文を出しても、業者がその注文を直接市場に流さない場合がありますし、トレーダーが損切りを行った場合に、その注文が市場に出されずにFXの業者内部で処理される場合には、トレーダーの損失が業者の利益として計上されることになります。
もちろん、すべての国内FX業者がこのような行動を取るわけではなく、信頼性の高い業者も存在しますが、OTC取引は透明性に欠けており、トレーダーがそれを検証する手段が限られているのが現状です。つまり、FX業者の善意に依存する部分が大きい取引方法であり、この点が現代の日本の投資環境には少し適合しづらい面があるといえるかもしれません。
使えない国内FXの自社独自プラットフォームという罠
FX業者がトレーダーの損失から利益を得る構造が存在するのであれば、その業者がどのような仕組みを導入するかは容易に想像がつきます。
たとえば、トレーダーに不利なシステムを構築することが当然考えられるでしょう。これは、ある種ゲームセンターの仕組みに似ています。ゲームセンターでは、顧客が景品を獲得しようと出費を重ねるほど運営側の利益が増える構造があります。そのため、獲得が難しい設定が施されたゲームが設置されていることも珍しくありません。運営上の理由があるとはいえ、このような仕組みは日本全国で広く行われています。
それと同様に、国内FX業者がトレーダーに不利なシステムを導入していてもそれ自体は驚くべきことではないかもしれません。
特に注目すべ起点として、国内FX業者が「独自の取引プラットフォーム」を導入している点も要チェック。国内FX業者の多くが自前のプラットフォームを使用するのに対し、海外FXはMT4やMT5が使用される状況ですので世界的に見たら少し珍しい状況です。確かに、海外FXにも独自プラットフォームを提供する業者は存在しますが、その数は国内に比べて少ないです。つまり海外FXでは同じ基準の下で取引が行われることが一般的なのです。
国内FXにおいて独自プラットフォームが広く採用されている背景には、日本の金融庁による厳しい規制の影響があると考えられます。この制約の中で収益を追求する結果として独自プラットフォームが生まれた可能性があります。ただし、それがすべての国内FX業者の独自プラットフォームが不利であることを意味するわけではなく、国内FXの歴史や規制環境を踏まえれば、この現象は一つの視点に過ぎません。ですから必ずしも否定的に捉える必要はないと言えるでしょう。
国内FXが使えないその他の理由
取引方式や自社独自プラットフォームなど、国内FXが利用しづらいとされる理由についてお話ししましたが、国内FXが海外FXよりも敬遠される理由は他にも多く存在します。
ハイレバレッジの取引ができない
国内FXが利用しづらいとされる理由の一つに、高レバレッジでの取引が制限されている点が挙げられます。レバレッジとは、手元にある資金よりも大きな金額の取引を行うことを可能にする仕組みのこと。これにより、少ない自己資金であっても実際の取引規模を拡大でき、相対的に大きな利益を期待することができます。ただし、同時に損失も拡大する可能性があるため、適切なリスク管理が求められます。現在、国内FXで許容される最大レバレッジは25倍です。
レバレッジは投資効率を向上させるための重要なツールですが、その上限が厳しく制約されることにより投資効率が低下します。このような規制は投資家保護を目的として行われていますが、結果として投資の自由度が制限されるため、国内FXが利用しづらいと言われるのも無理のないことと言えるでしょう。
追証が発生する
海外のFX業者ではゼロカットシステムが導入されており、トレーダーが巨額の負債を抱えるリスクはほとんどありません。ゼロカットシステムとは、FXやCFDなどの差金決済取引において、相場の急変動やギャップによって証拠金残高がマイナスになる事態が発生した際、そのマイナス分を証券会社やFX業者が負担し、取引者の口座残高をゼロまで回復させる仕組みのことです。2018年からは、ヨーロッパでFX業者に対するゼロカットシステムの導入が義務化され、投資家の保護がより強化されています。
一方で、日本のFX市場ではゼロカットシステムが採用されていないため、トレーダーは追証を求められるリスクを負っています。追証とは、証拠金取引において、相場の変動や損失拡大により、口座内の有効証拠金が規定の維持証拠金を下回った場合に追加で証拠金を差し入れるよう求められることを指します。FXで大きな負債を抱える主な原因は、この追加担保要求に起因するケースが大半です。「投資家保護」を本来の目的とするのであれば、日本のFX市場もゼロカットシステムを導入すべきでしょう。
しかしながら、「投資家保護」と謳いながら、実際の施策がその方向に向かっていない点が、日本のFX市場に対する評価が低い理由の一つである可能性があります。
実は海外FXのほうがお金に関しては厳格
海外という言葉に漠然とした不安を感じる人も少なくありませんが、実際には日本の金融庁よりもイギリスのFCA(金融行動監視機構)の規制の方がさらに厳格であると言われています。FCAのライセンスを取得して業務を行っている海外FX業者は、その信頼性において国内のFX業者を上回ると考えられる場合もあります。
FCAのライセンスでは、顧客資金の分別管理が厳密に義務付けられているだけでなく、FX業者が経営破綻した場合には、トレーダーが預けた資金を返却する義務も定められています。このような保護体制が整っているため、FCAライセンスを持つ業者は高い信頼性を維持しています。ただ、日本向けサービスを行っている海外FXでもこのライセンスで日本向けに営業しているところはほぼありません。
「国内」というブランドにかつてのような絶対的な価値を感じる時代は、少しずつ変わりつつあるのかもしれません。