FXにはさまざまな取引手法がありますが、その中でも特に注目されているものに「両建て」という手法があります。両建ては価格が上昇しても下落しても利益を狙える点で人気がありますが、多くの取引戦略の中で両建ては特に複雑で難しいとされることも少なくありません。また、FX業者によっては禁止されていることもあるため、ある程度スキルや経験を持っていないとトライしない戦略ともいえるかもしれません。
今回は、この両建てという手法が具体的にどのようなものなのか、そして実際に難しいと言われる理由について詳しく解説していきます。
そもそも両建てとは?
両建てとは、同じ金融商品について買いポジションと売りポジションを同時に保有する取引手法のことを指します。たとえば、価格の上昇を期待して買いを入れる一方、価格の下落に備えて売りも行うような取引です。両建ては、相場変動によるリスクを抑えることや損失を限定したい場合に役立ちますし、利益確定するタイミングを柔軟に選ぶことができる点がメリットです。
ではなぜ同時に売りと買いのポジションを取るのでしょうか?
売りと買いのポジションを同時に保有することで、通貨価格が上昇しても下降しても、利益と損失が互いに打ち消し合う状態になります。そのため、一見すると利益も損失も生じないため、この両建てにどのようなメリットがあるのか疑問に思うかもしれません。確かに、FXの目的は損失を最小限に抑えつつ利益を最大化することにあります。そのため、利益が出ない状況は一見すると好ましくないように思えますが、両建ては特定の状況やタイミングで適切に活用することで非常に強力な戦略となるのです。その真価を発揮する場面を理解することが、両建てを効果的に使いこなす鍵となります。
両建てのメリットとは?
両建てについてさらに詳しく掘り下げてみましょう。こその主なメリットは2つあります。
以下両建てが持つ具体的なメリットについて詳しく解説していきます。
相場の動きが上でも下でも対策可能
両建てでは、売りと買いの両方のポジションを同時に持つことで相場が上昇しても下降しても利益と損失が打ち消し合う状態を作り出します。この特徴によって、相場がどの方向に動いても柔軟に対応できるというメリットがあります。
通常、相場は一定の方向に進むわけではなく、上昇と下降のパターンを繰り返します。上昇トレンドと下降トレンドと呼ばれる動きは、どちらも永続するものではなくいずれどこかで転換点が訪れます。この特性を活かし、一方のポジションで利益を確定させたあと、残ったポジションの損失が利益より少ないタイミングで決済を行えば、全体として利益を得ることができるのです。
また、FXでは重要な経済指標やデータが発表される際に相場が一方向に大きく動くことが頻繁にあります。このような急激な動きの中でも、両建てを活用して適切なタイミングで決済を行うことで、どちらの方向に動いても利益を狙うことができます。両建ては、このような不確実な相場環境で効果を発揮する手法と言えるでしょう。
強制ロスカットを防ぐことが可能
FX取引するのに証拠金が必要ですが、損失が証拠金を大きく上回ると、「強制ロスカット」と呼ばれる強制的な決済が行われます。この強制ロスカットの基準はFX業者ごとに異なりますが、基準を詳細に調べるよりも、そもそも強制ロスカットを回避する方法に注目することが重要です。
トレーダーにとって、強制ロスカットは絶対に避けたい事態の一つ。万が一相場が予想と逆に動いた場合でも、スワップポイントを考慮しない限り、両建ての手法を活用することでさらなる損失を防ぐことができます。両建てを利用することにより、トレンドが反転するまでの間耐えることができ、強制ロスカットを回避できる可能性が高まります。
両建てのデメリットとは?
両建てには良い点ばかりではなく、当然デメリットも存在します。両建てのデメリットを正しく理解した上で、その情報を基に取引を行うかどうかを慎重に判断することが重要です。
詳しく見ていきましょう。
決済のタイミングが難しい
両建ては、決済タイミングを見極めるのが難しい取引です。この両建ては決済のタイミングが非常に重要であるため、難易度が高い取引方法として知られています。同時に2つのポジションを適切にクローズする必要があるため、それを難しく感じるのは当然のことです。
さらに、利益と損失のバランスを考慮しながら決済を行う必要があり、その要求される判断力は相当高いものとなります。もし決済タイミングを誤ってしまうと、一方のポジションが長期間保持される、いわゆる「塩漬け」の状態に陥ることがあります。このような場合、再び両建てを行う必要が生じる可能性もあります。
特に取引が塩漬け状態になると、資金を引き出すこともできず新たな取引チャンスを逃すリスクが高まります。そのため、塩漬けを避けるよう注意しながら慎重に取引を進めることが大切です。
マイナススワップが負担になる可能性がある
スワップポイントとは、2つの通貨間で発生する金利差を調整する仕組みを指します。通貨ペアのポジションによっては、スワップポイントを日々受け取ることができる場合もありますが、逆にスワップポイントを支払う必要が生じることもあります。スワップポイントの具体的な値や条件はFX業者によって異なりますが、多くの業者では買いと売りのポジションでスワップポイントの設定が異なるため、マイナスのスワップポイントが発生しやすい傾向があります。
その結果両建てを行う際には、両方のポジションに対して日々スワップポイントを支払う必要が生じ、経済的な負担となることがあります。さらに両建てを長期間維持すると、負担は徐々に大きくなり、取引全体のコストが増加する可能性があります。そのため、スワップポイントの影響を考慮しながら両建てを活用することも大事です。
両建てをする上で知っておきたいスワップポイントサヤ取り
多くのFX業者では売りと買いのスワップポイントが両建て時にマイナスとなるよう設計されており、これが経済的な負担となるリスクがあります。しかし、2つの異なる業者を利用して両建てを行う場合、この状況が変わる可能性があります。異なる業者間でのスワップポイントの差を活用することで、プラスの収益を積み上げることが可能となります。
ただし、スワップポイントは市場の状況に応じて日々変動するため、細心の注意を払いながら取引を進めなければなりません。計画的に行えば、このアプローチは安定した利益を目指す有効な手法となりますが、売りと買いのスワップ差が極端に大きい場合、一方のポジションが強制決済されるリスクがあるため、証拠金の状況を常に監視することが必要です。
1つの業者だけを利用して両建てを行うのは難しい場合が多いですが、2つの業者を活用することで取引の難易度を下げることができます。そのためには、事前に両業者のスワップポイントや取引条件を十分に調査する必要があります。また、取引手数料や出金手数料といったコストについても確認しておくことが欠かせません。そのために、証拠金の動きとスワップポイントの変動に注意を払いながらトレードを進めることが大切です。2つの業者に入金する必要があるため初期投資は増えますが、十分な資金がある場合には挑戦する価値は十分にあると言えるでしょう。
基本的に両建ては難しい
両建てという取引手法は、一般的に難易度が高いです。特に、1つの業者を利用した両建てでは、利益確定や損失確定のタイミングを見極めるのが非常に難しく、FX上級者であってもかなり難易度が高いとされています。そのため、FX初心者がこの手法に挑戦するのはおすすめできません。
しかし、2つの業者を活用してスワップポイントの差を狙う両建てであれば、難易度は大幅に下がります。簡単とまでは言えませんが、FX初心者でも取り組むことができ、比較的リスクを抑えた方法として実践しやすいと言えるでしょう。