FXトレーダー界隈では、追証による借金リスクを回避できるゼロカットシステムはメリットばかりの仕組みだと評価されています。しかし、果たして本当にデメリットが全くないのでしょうか?
本記事ではゼロカットシステムが持つ潜在的なデメリットについて考えてみます。
ゼロカットシステムにはFX業者側のメリットもある
ゼロカットシステムとは、相場の急激な変動によって顧客の証拠金残高が一時的にマイナスへ転落した場合に、FXやCFDなどを扱うFX業者がマイナス分を補填して口座残高をゼロに戻す仕組みのことです。これによって投資家は追証(追加証拠金)という追加の資金負担を強制されることなく、損失が元手資金の範囲内に限定されます。
ゼロカットシステムを再評価すると、トレーダーにとって非常に有利な仕組みであることが分かります。ゼロカットシステムでは、トレーダーが被った損失をFX業者が補填するため、口座がマイナス残高になる心配がなく最終的には残高がゼロで止まります。つまり、元本は失っても借金を背負うことはないのです。そのため、最大のメリットは巨大な負債のリスクを回避できる点にあります。しかし、なぜFX業者がトレーダーの損失を補填するのでしょうか?その答えは、FX業者自身にもメリットがあるからです。
多くのトレーダーがFX市場に参入すれば、その中の一定数は損失を出すことが予想されます。この損失をFX業者がカバーする際に多額の負担が発生する可能性があり、FX業者自体が経済的に危機に陥るリスクも考えられます。しかし、ゼロカットシステムを導入しながらもFX業者が経営を継続しているのは、それが業者の顧客獲得や市場競争力の維持に寄与しているからです。このシステムを維持する裏側には、業者にとってのメリットや戦略が存在するからといっても過言ではありません。
ゼロカットシステムを採用することによって出てくる不透明な部分がデメリット?
ゼロカットシステムにも当然ながらデメリットが存在します。
ゼロカットシステムは業者側のリスクヘッジコストを増大させます。トレーダーが大きな損失を出して口座残高がマイナスになるたび、業者はその負担を肩代わりする必要があるため、結果的にそのコストはスプレッドや手数料、スワップポイントなどの取引条件に反映される可能性があります。業者としてはビジネスモデルを維持するために、顧客が日常的に支払う取引コストを高めざるを得ない場合があるのです。
また、ゼロカットシステムが「損失は預けた資金まで」と明確な上限を示すことで心理的安心感を与える一方、それがトレーダーの行動面では「多少リスクを取っても大丈夫だろう」という慢心につながる場合があります。これは、いわゆるモラルハザード的な効果であり、ゼロカットシステムがあるからこそ過剰なレバレッジでギャンブル的な取引に走ることで、結果的に当初より大きな損失を抱えてしまうことも考えられます。損失自体が預け入れ証拠金の範囲内で済むとしても、リスク感覚の麻痺がトータルで見れば資金効率を悪化させ、長期的な運用成績を損ねかねません。
さらに、ゼロカットシステムはあくまで「業者による顧客保護策」であり、法的拘束力や必ず適用される保証があるとは限りません。業者が定める利用規約には免責条項が用意されているケースがあり、極端な相場急変、流動性がほぼ消失するような異常事態、または業者自身の財務体力の問題など、特定の条件下ではゼロカットシステムが適用されないこともあり得ます。その場合、投資家は想定外のマイナス残高を追う可能性が否定できず、そもそもの「リスク限定」という前提が崩れかねません。
ゼロカットシステムは一般的にメリットが多いとされていますがデメリットもあり、もたらす取引の不透明さは無視できません。こうした不明瞭な部分が存在するため、業者選びや取引環境に対する正確な判断が求められる点が、ゼロカットシステムの潜在的なデメリットとなり得るのです。よく注意しておきましょう