海外FXで法人口座を開設することを検討している人は多いかもしれません。特に税金対策の観点から、法人口座を利用する選択をするケースは増えているようです。しかしながら、法人口座開設の具体的な手続きについて詳しく知らない人も少なくありません。FX業者によって必要な手続きや条件は異なる場合があるため、事前確認は非常に大事です。
本記事では、法人口座の開設方法や、それに関連するメリットとデメリットを詳しく解説していきます。
海外FXでの法人口座開設の手続きとは?
海外FXであればどの業者でも法人口座を開設できると考える人は多いようです。しかし実際には、法人口座をサポートしている海外FX業者でしか開設することはできません。また、法人口座の開設手続きは個人口座とは異なり、入念な準備が必要です。
法人口座の開設に必要な書類は次のようなものがあります。
- 会社の登記簿謄本、設立定款などの法人確認資料
- 法人の住所が分かる公共料金の明細や請求書等
- 役員の身分を証明するもの(運転免許証やパスポート、マイナンバーカードなど)
- 役員の現住所が確認できる請求書や銀行の取引明細など
必要な書類はFX業者ごとに異なる場合があります。法人口座開設が可能なFX業者では専用の法人口座開設窓口が用意されており、その手順に従って書類を提出すれば手続きは進められます。ただs、法人口座開設には手間がかかることもあるため、検討する際には事前に利用を考えている海外FX業者に詳細を確認しておくことをおすすめします。
海外FXで法人口座を開設するメリット
海外FXで法人口座を開設している人は少なくなく、新たに開設を検討している人も多いです。
なぜ海外FXで法人口座を選ぶ人が多いのでしょうか?それには次のような理由があります。
節税対策に便利
海外FXを個人口座でトレードを行い利益が出れば、当然所得税の課税対象となります。海外FXで得た利益は、「雑所得」に分類されますが、これは総合課税の対象となり、以下のような累進課税が適用されます。
課税所得金額 | 税率(%) | 控除額(円) |
---|---|---|
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円超~330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円超~695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円超~900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円超~1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円超~4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
一方、法人口座を利用した場合には課税対象は所得税ではなく法人税となります。資本金が1億円以下の中小法人で年間利益が800万円までの場合、法人税率は15%が適用され、800万円を超える部分には23.2%の税率が適用されます。もちろん、年間の収益やその他の条件によって最終的な税額は異なりますが、単純に税率だけを比較すると、法人口座を利用する方が税負担を軽減できる可能性が高いと言えます。
使用した経費の範囲が広がる
法人口座を開設する大きなメリットには、経費として認められる範囲が広がる点も大きなポイント。課税対象となる利益を経費として控除できるため、結果的に支払う税額を大幅に減らすことができます。個人口座でも経費を申告することはできますが、その範囲や認められる項目が法人口座に比べて限定される場合が多いです。
法人口座を利用することで、より幅広い経費が計上可能になります。特に注目すべき点として、役員の給与を経費として計上できることです。仮に海外FXの収益と役員給与が同額であれば、課税対象となる利益は実質的にゼロとなり、法人税の負担を回避することができます。
損益の合算ができる
個人口座を利用する場合、海外FXの収益は雑所得として扱われるため他の投資からの損益と相殺することはできません。しかし、法人口座を使用すると、法人が運営する他の事業活動の損益と海外FXの損益を合わせて計算することが可能です。
たとえば、海外FXで利益が出た場合でも他の事業部門で損失が発生していれば、その損失を差し引いて課税対象額を計算することができます。これにより、全体の税負担を軽減できる場合があります。
海外FXで法人口座を開設するデメリット
ただ、法人口座開設にはメリットだけでなく、デメリットやリスクも存在します。これらもしっかり理解したうえで、法人口座開設を慎重に判断することが重要となります。
法人設立や維持コストがかかる
法人口座開設は個人では行えません。海外FXで法人口座を持つためには、法人を設立する必要であり、法人としての正式な登記手続きが求められます。法人登記の手続きは複雑なため、自分で必要な書類を準備するのは難しい場合がほとんどです。司法書士に依頼すれば手続きはスムーズに進みますが、それに伴う費用が20万円~25万円近く発生します(株式会社の場合)。
また、法人口座を開設すると毎年法人としての確定申告が必要になります。法人税の計算や決算手続きは個人の場合よりも複雑であり、税理士に依頼することになるでしょう。それにも当然費用がかかります。法人口座を利用するためには、メリットだけでなくコストや手間がかかることを覚えておきましょう。
赤字でも税金の支払い義務が生じる
海外FXを法人口座で行う場合、地方税の支払いが義務付けられます。この地方税は法人の利益や損失に関係なく、毎年一定額が課税されるため、たとえ赤字であっても70,000円の納税が必要となります。日本の税制度は税収に対して非常に厳格ですが、その一方で税金の使途が必ずしも効率的ではないと感じられることもあり、この状況を完全に回避するのは難しいです。
利益が出ても好きに使えない
個人事業として海外FXを行っている場合、得られた利益はすべて自分のものであって自由に使うことができます。
しかし法人口座では、たとえ法人の代表者であっても収益を自由に使用することはできません。収益は法人に帰属するものであり、個人が手にする場合は、あらかじめ決定された役員報酬としてのみ支払われる仕組みになっています。
海外FXで法人口座を開設するなら一度専門家に相談すること
海外FXの法人口座に関するメリットとデメリットについて、十分に理解できたのではないでしょうか。
しかし、メリットがあるからといってすぐに法人口座開設を進めるのは慎重さを欠く判断かもしれません。というのも、法人口座のメリットが全ての人に適しているわけではなく、開設すべきかどうかは状況によりけりだからです。
法人口座の開設には、それぞれ海外FX業者が行う審査が必要です。法人を設立しただけでは、必ずしも口座開設できるわけではありませんし、法人化には専門家の知識が必要となることもあります。自分だけの判断で法人化を進めるのではなく、信頼できる専門家(司法書士や税理士など)にアドバイスを求めることからスタートするのが賢明です。
慎重に計画を立て、必要な準備を進めていきましょう。